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高松地方裁判所 平成元年(ワ)276号 判決

主文

一  被告らは、連帯して、原告中山久雄に対し、金二七五〇万円及びこれに対する昭和六三年八月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、連帯して、原告中山勢津子に対し、金二五五〇万円及びこれに対する昭和六三年八月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを一〇分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

五  この判決の一、二項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告らは、連帯して、原告中山久雄に対し、金三二六二万四二三七円及びこれに対する昭和六三年八月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、連帯して、原告中山勢津子に対し、金二九〇四万四八三七円及びこれに対する昭和六三年八月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告らが惹起した交通事故の際に、被告梶の車両に同乗していた中山直美が死亡したことについて、自賠法三条、民法七〇九条、七一九条一項により被告らに損害賠償義務があるとして、亡直美の相続人である両親である原告両名が被告らに対してこれを請求する事件である。

一  争いのない事実

昭和六三年八月一一日、午後八時〇五分ころ、坂出市久米町二丁目一〇番三一号先町道の交差点において、普通乗用自動車(香五六は二五―四六)を運転して同所を右折しようとした被告山田が、右折にあたり直進車の動静に注意すべき義務があるのにこれを怠つた過失と、普通乗用自動車(徳五六は五四―三六)を運転して同所を直進しようとした被告梶が右右折車の動静を注意して交差点を進行すべき義務があるのにこれを怠つて進行した過失が競合して出会頭に衝突し、被告梶の車両助手席に同乗していた中山直美(昭和四三年五月一三日生)が同日午後九時二五分、坂出市立病院において死亡した。直美は原告夫婦の長女であり、その相続人は原告両名である。

二  争点

損害額の算定に争いがある。

第三争点に対する判断

一  損害額について判断する。

1  逸失利益

直美は昭和四三年五月一三日生の女子であり、本件事故当時満二〇歳で大阪芸術大学音楽教育課二年生に在学中であつたところ、昭和六三年賃金センサス第一巻第一表、企業規模計、産業計、女子労働者、旧大・新大卒、二〇歳~二四歳による年収額は、二四二万七五〇〇円である(争いない)。

亡直美は、少なくとも大学卒業後六七歳まで、右給与額を下らない収入を得られたものと認められるから、右金額を基礎収入とし、生活費として四〇パーセントを控除するのを相当と認め、新ホフマン係数によつて中間利息を控除して逸失利益を算定すると、三二〇〇万円となる(千円未満切捨)。

2,427,500×(1-0.40)×(23.8322-1.8614)=32,000,470

2  慰謝料

本件事故態様、被害者の年令、その他本件訴訟にあらわれた事情を総合考慮すると、慰謝料としては、金一六〇〇万円が相当である。

(以上の1、2を原告らが相続分二分の一で相続すると、各二四〇〇万円となる。)

3  葬祭費・引越料等

原告中山久雄は、〈1〉葬祭関係費用として一二六万〇一五三円を支出し、〈2〉仏壇を購入の費用として一八八万円を支出し、〈3〉墓碑建立費として四〇五万八七五〇円を支払い、また、直美の下宿を引き払うための費用として、七万九四〇〇円をそれぞれ支出し、なおこれ以上の支出のあることが認められる(甲七の一~一六、八、九の一~三、一〇の一~一二、原告中山勢津子)。

これらの原告中山久雄の支出のうち、一五〇万円については、社会通念に照らし、本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

4  弁護士費用

原告らは本件事故について、本件訴訟代理人である弁護士を依頼して本件訴訟を提起したが、本件事案の難易、訴訟の経緯、認容額、その他本件諸般の事情を考慮し、原告中山久雄に関しては二〇〇万円、原告中山勢津子に関して一五〇万円の範囲で本件事故と相当因果関係のあるものと認める。

二  よつて、本件請求は、原告中山久雄については、二七五〇万円の限度で、原告中山勢津子については二五五〇万円の限度で理由がある。

(裁判官 花井忠雄)

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